税理士法人はるか

QA19.非収益事業から収益事業の用に供した減価償却資産に係る償却費

Q1.これまで非収益事業のように供していた減価償却資産につき、テナントに貸与する収益事業を開始しました。

 非収益事業の用に供していた期間については、減価償却費の計上を行っておらず、取得価額のままで帳簿価額に

 計上されています。

 この場合、収益事業を開始するにあたり、取得価額をベースに減価償却を行ってよいものでしょうか?

 また、計上に際して留意する点をご教示ください。

 

A1.法人税基本通達15-2-2においては、次の通り定められております。

(固定資産の区分経理)

15-2-2 公益法人等又は人格のない社団等が、収益事業以外の事業のように供していた固定資産を収益事業の用に供すること

 としたため、これにつき収益事業に属する資産として区分経理をする場合には、その収益事業の用に供することとなった時に

 おける当該固定資産の帳簿価額によりその経理を行うものとする。この場合において、当該公益法人等又は人格のない社団等

 が、その区分経理に当たりあらかじめ当該固定資産につき評価替えを行い、その帳簿価額の増額をしたときであっても、その

 増額はなかったものとする。

(注)本文により収益事業に属するものとして区分経理をした固定資産に係るその後の償却限度額の計算については、7-4-3から

   7-4-4の2まで(償却方法を変更した場合等の償却限度額)の例による。

 

 この通達に従えば、今回のケースでは、取得価額をベースに償却計算を行うこととなります。

 これは、非収益事業での償却不足を収益事業に持ち込むことになり、不合理との考えもありますが、もともと収益事業以外

 の事業における経理については税法の規制が及ばないのであるから、従来のその経理において行われていた減価償却その他

 の計算は、特段の理由がない限り、一応妥当なものであったものとして区分経理することを認めざるを得ないという考えに

 基づいています。

 もちろん、その区分経理にあたり、あらかじめ評価替えを行いその帳簿価額を増額させるようなことは、認められません。

 

 

 

Q2.前問の減価償却における、償却限度額の計算についての考えをご教示ください。

 

A2.非収益事業より、収益事業へ転用した場合の減価償却資産に係る償却限度額の計算は、当該減価償却資産の取得日と、種類等

 に応じて、以下の方法によります。

取得日資産の種類償却方法
選定できる償却方法法定償却方法
H19年3月31日以前取得建物H10年3月31日以前取得旧定額法、旧定率法旧定率法
H10年4月1日以後取得旧定額法旧定額法

附属設備

構築物

器具備品

 

旧定額法、旧定率法

 

旧定率法

H19年4月1日以後取得建物定額法定額法

建物附属設備

構築物

H28年3月31日以前取得定額法、定率法定率法
H28年4月1日以後取得定額法定額法
器具備品定額法、定率法定率法

 

 ところで、転用後に償却方法を定率法から定額法に変更した場合は、法人税基本通達7-4-4の取扱いが適用されます。