憲法は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」(憲法30)と定めています。納税の義務は当然のものであるとしても、一方でその義務は「法律の定めるところにより」とし、租税法律主義の原則を明らかにしています。すなわち、国民は法律の定めによらなければ納税の義務を負うことはないということであり、納税義務の制限を示したものです。
憲法にいう「国民」とは、国家の構成員を指し、“自然人(個人)”及び“法人(団体)”に適用すると解釈されています。
また、宗教についていえば、「1.信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。2.何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。3.国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」(憲法20)と政教分離の原則を示しています。
宗教法人に対して原則的に課税が行われるということは、国家による宗教法人に対する徴税権力の介入を許すことで、信教の自由を侵害するのではないかとの危惧があり、この条文が宗教法人に対する課税権を抑制する背景となっています。
また、租税理論的にいうと、宗教法人を含む「非営利」「非分配」の公益法人は、そもそも持分がなく、本来的に利益配当を目的としていません。したがって、利益配当を本来の目的とする株式会社のような営利法人課税の理論になじまないところがあります。また、宗教行為自体を金額で測定することにもなじみにくいところです。
こうしたことから、各種の国税を定める税法においては、宗教法人を「原則非課税」にしています。したがって、宗教法人は、非課税とされない収益事業についてのみ、税法や税条例で定められた範囲内で例外的に納税の義務を負うことになります。
宗教法人法84条には、次のような定めがあります。
「国及び公共団体の機関は、宗教法人に対する公租公課に関係がある法令を制定し、若しくは改廃し、又はその賦課徴収に関し境内建物、境内地その他の宗教法人の財産の範囲を決定し、若しくは宗教法人について調査をする場合その他宗教法人に関して法令の規定による正当の権限に基く調査、検査その他の行為をする場合においては、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。」
要約しますと、国等は宗教法人に対して公租公課に関する法律を制定し、また調査権限も有するが、信教の自由を妨げるようなことを行ってはならない、ということです。これは、先に述べた、憲法の解釈を宗教法人法上も改めて表明しているものです。