Q.今回、収益事業を開始することになりましたが、必要な手続きや注意点を教えてください
A.収益事業を開始する場合の手続きを、注意点と併せて下記に回答します。
手続き1.宗教法人の規則を変更と登記を行う
宗教法人はいうまでもなく、教義の布教等を行うこと(これを「業務」と呼びます)を本来の目的とする法人ですが、この活動
以外であっても、公益事業を行うことができるとし、また、その目的に反しない限り公益事業以外の事業を行うことも許されてい
ます。(宗教法人法6条)
ただし、この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が
援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならないとされています。
宗教法人が公益事業や公益事業以外の事業を行う場合は、その種類や、その管理運営方法、収益処分などを規則に記載する必要
があります。(法12条1⑦)そして、これらは登記事項でもあります。(法52条2①)
さらに、これらの事業内容を把握するため、会計区分を新たに設定する必要があります。処理について「区分経理」が求められ
るため、会計処理ルールを定める必要もあります。
したがって、規則に記載を行っていない収益事業等を新たに行う場合は、規則の変更を伴うことになりますから、法人で定めら
れた規則変更の手順に従い、所轄庁の認証を受ける必要があります。(法26条1)
規則の変更の手順は、したがって、次のようになります。
①新たな収益事業の種類や管理運営方法を決定する
②規則の変更のための法人の手順を実施する(総代会や責任役員会の承認決議を経る等)
③所轄庁の認証
④登記
手続き2.所轄税務署長へ届出等を提出する
収益事業を開始する場合、次の届出等を所轄の税務署に提出する必要があります。
①収益事業の開始届出
宗教法人が新たに収益事業を開始した場合には、その開始した日以後2か月以内に「収益事業開始届出書」を所轄の税務署長に
提出することになっています。
②青色申告の承認申請
青色申告書を提出しようとする場合には、その提出しようとする事業年度開始の日の前日までに所轄税務署長に「青色申告の
承認申請書」を提出して、その承認を受けることが必要です。
なお、収益事業開始初年度から青色申告書を提出しようとする場合には、その開始の日以後3か月を経過した日と収益事業開
始初年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までに申請すればよいことになっています。
③棚卸資産の評価方法、減価償却資産の償却方法等の届出
法人税の計算において、棚卸資産の評価方法や減価償却方法について、法人の選択により一定の方法が選べることになってい
ます(但し、減価償却については一定の資産については選択の余地がない場合もあります)ので、宗教法人がそれらの選択をし
ようとする場合には、所定の期日までにその選択しようとする方法を届け出てください。
手続き3.消費税の届出を提出する
①インボイス登録を行うかどうか
通常、収益事業を行う場合は、その収入は課税売上に該当するケースが多く、かつその取引先(買手)の多くが課税事業者と
考えられます。買手が、仕入税額控除のためにインボイスを必要としている場合には、インボイスの登録の必要性が生じます。
インボイスを登録しない場合、買手が仕入税額控除を受けられなくなるため、取引価格の交渉や、場合によっては取引の見直
しを求められる可能性も考慮しなければなりません。
なお、インボイスの登録をした場合には、消費税の申告および納税義務が生じることとなります。