宗教法人の会計Q&A
QA23.固定資産の処分について
Q.固定資産の処分方法と、課税関係も含め教えてください
1.宗教法人による事故の不動産等の処分について
宗教法人も他の営利法人と同様に自己が所有する不動産等の売却処分を行うことが出来ます。ただし公益法人としての性格上、
次の手続きを経る必要があります(宗教法人法第23条1号)。
① 寺院規則に定める方法により法人内で売却処分の決議(※1)
② (必要な場合は)包括団体の承認を受ける
③ その売却処分の最低1ヶ月前に信徒その他の利害関係者に対しその行為の要旨を示して公告(※2)
(※1)寺院規則に財産の処分等に関する定めが無い場合は責任役員等の定数の過半数の決議が必要となります(宗教法人法第19条)。
(※2)公告の方法は寺院規則の定めに従います
なお、上記①②③の手続きは以下のような行為を行う際にも必要となります。
イ.不動産等を担保に供する場合
ロ.新規借入、債務保証を行う場合
ハ.主要な境内建物の新築、改装、移築、除却、著しい模様替えを行う場合
ニ.境内地の著しい模様替えを行う場合
ホ.主要な境内建物や境内地の用途変更を行い、本来の目的以外の目的に供する場合
2.不動産等の範囲(宗教法人法23条に定めるものの範囲)
ここでいう不動産等とは、境内地・境外地・境内建物・境外にある建物・財産目録に掲載されている宝物などが該当します。
3.罰則
前述の公告をせずに不動産等の処分を行った場合には、代表役員に対して10万円以下の過料が科される可能性があります。(宗
教法人法88条3号)
4.適切な手続きを経ずに行った場合の契約の効力
上記の手続きを経ずに境内地・境内建物の売却処分を行った場合、その行為は原則として無効とされます。ただし、取引の相手
側がその行為が適切な手続きを経たものか否か知らなかった場合には無効とはされません。(宗教法人法第24条)
なお、この宗教法人法第24条では境外地、境外にある建物の売却処分に関しては言及がありません。これらについて適切な手続
きを経ずに行われた売却処分の効力に関しては、個別に判断されます(無効とならないとの判例もいくつかあります)。
5.固定資産の売却と税金
(1)宗教活動本来の用に供されていた固定資産
発生した売却益には原則として法人税等の課税はありません。
(2)収益事業の用に供されていた固定資産
収益活動の用に供されていた固定資産を売却処分した場合、発生した売却益については収益事業に付随して発生した所得と扱わ
れるため、原則として法人税等の課税対象となります。
ただし、次のいずれかの様な場合には収益事業用の固定資産の売却益であっても非課税とされています(法人税法基本通達15-
2-10)。
①おおむね10年以上にわたって保有していた固定資産の売却
②収益事業の一部又は全部を廃止する際に、その廃止事業に属する固定資産の売却
なお①に関して、10年以上にわたって保有していた土地(借地権を含む)を区画整理、集合住宅等を建築した上で売却した場合、
原則として不動産販売業に該当しますが、その一連の行為が土地の譲渡を容易にするために行われたものであると認められる場合
には、売却益のうち不動産の値上がり益に相当する部分に限っては非課税となります(法人税法基本通達15-1-12)。
ただし売却益のうち「区画整理や集合住宅等の建築に伴う益」と「不動産の値上がり益」による部分が明確に分かれているケー
スは少なく、実務上は“その不動産を造成前の状態で売却した場合に見込まれる利益”をベースに計算する方法などが考えられます。